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芸術選奨：１９人に文科大臣賞　文化庁は２９日、０７年度（第５８回）芸術選奨の受賞者を発表した。文部科学大臣賞には、痴漢の冤罪（えんざい）事件を題材にした映画「それでもボクはやってない」を手がけた映画監督の周防正行さん（映画部門）や「志の輔らくご」が評価された落語家、立川志の輔さん（大衆芸能部門）ら１９人が選ばれた。　　文部科学大臣新人賞には、俳優の唐沢寿明さん（演劇部門）ら１０人が選ばれた。贈呈式は３月１０日、東京都内のホテルで行われ、賞状と賞金３０万円が贈られる。【高山純二】　　◇落語家・立川志の輔さん「迷いあったが、新作これからも」　　「これまで受賞した落語家は、何かを成し得た方々ばかり。オレは何を成し得たんだろうと。ずっと自分の好きなことをやってきましたが、それは師匠の談志のおかげです」　　落語家としては遅い２９歳で立川談志さんに入門。ところが、半年後に一門が落語協会を脱退し、寄席で修業する機会を失う。　　「修業のための『空間』を探し続けた２５年間でした。時代に合うライブをやりたい、自分が聴きたい落語を自分で作って演じたい。ただただ、そう思ってやってきただけ」と振り返る。　　「これからも新作を手がけていきたい。少し迷いもあったが、胸を張って作っていきます」【油井雅和】　　◇映画監督・周防正行さん「権力側の人の内面を知りたい」　　裁判制度の問題点を描いた受賞作「それでもボクはやってない」は１１年前の「Ｓｈａｌｌ　ｗｅ　ダンス？」からガラリと趣を変えた社会派作品。今の日本映画界にはなじみにくい内容だったが、「見ていただければ、このままでいいはずがないと関心を持ってもらえる」と確信していた。　　興行も成功し、各映画賞も席巻。作品が注目され、社会の問題意識が高まることを喜んだ。しかし、「簡単に改善されるとは思わない。司法の現状は絶望的」と悲観的だ。「これからは、なぜ裁判がこうなったのかを探りたい。現役裁判官や検察官ら、権力側の人たちの内面を知りたい」【勝田友巳】　＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝　　◇受賞者と対象　　受賞者と対象は以下の通り。（敬称略）　　◇文部科学大臣賞　　＜演劇＞　　文楽人形遣い、桐竹勘十郎（５５）＝「絵本太功記」光秀、「夏祭浪花鑑」団七などの演技▽脚本家、三谷幸喜（４６）＝「コンフィダント・絆」などの作・演出　　＜映画＞　　映画監督、周防正行（５１）＝映画「それでもボクはやってない」の成果▽映画カメラマン、たむらまさき（６９）＝映画「サッドヴァケイション」の成果　　＜音楽＞　　ピアニスト、高橋アキ（６３）＝「モートン・フェルドマン／トリオ」などの演奏▽作曲家、細川俊夫（５２）＝「ダンス・イマジネール」、「循環する海」などの作曲　　＜舞踊＞　　演出・振付家・ダンサー、金森穣（３３）＝「ＰＬＡＹ　２　ＰＬＡＹ−干渉する次元」、「ＮＯＩＳＭ　０７−Ｗ　ｖｉｅｗ」などの成果▽舞踊家（日本舞踊）、若柳吟（６５）＝長唄「石橋」、地歌「蛙」、荻江「八島」などの演技　　＜文学＞　　小説家、島田雅彦（４６）＝小説「カオスの娘」▽俳人、矢島渚男（７３）＝句集「百済野」　　＜美術＞　　陶芸家、小川待子（６２）＝作品「Ｌｉ２Ｏ・Ｎａ２Ｏ・ＣａＯ・Ａｌ２Ｏ３・ＳｉＯ２：水の破片」などの成果▽美術家、森村泰昌（５６）＝個展「森村泰昌・美の教室、静聴せよ」などの成果　　＜放送＞テレビプロデューサー、菅野高至（６１）＝ドラマ「風の果て」の成果▽テレビディレクター、水島宏明（５０）＝ドキュメンタリー「ネットカフェ難民〜漂流する貧困者たち」の成果　　＜大衆芸能＞　　落語家、立川志の輔（５４）＝「志の輔らくご」などの成果▽ミュージシャン、細野晴臣（６０）＝ＣＤ「ＦＬＹＩＮＧ　ＳＡＵＣＥＲ１９４７」などの成果　　＜芸術振興＞　　ベネッセアートサイト直島代表、福武総一郎（６２）＝「直島スタンダード２」の成果　　＜評論等＞　　民俗学者、赤坂憲雄（５４）＝著作「岡本太郎の見た日本」▽文化資源学、木下直之（５４）＝著作「わたしの城下町　天守閣からみえる戦後の日本」　　◇文部科学大臣新人賞　　＜演劇＞　　俳優、唐沢寿明（４４）＝「コリオレイナス」の演技　　＜映画＞　　映画監督、広末哲万（２９）＝映画「１４歳」の成果　　＜音楽＞　　尺八演奏家、徳丸十盟（４７）＝第１回徳丸十盟尺八演奏会などの演奏　　＜舞踊＞　　舞踊家（バレエ）、山本隆之（３５）＝「椿姫」などの演技　　＜文学＞　　詩人、斎藤恵美子（４７）＝詩集「ラジオと背中」　　＜美術＞　　現代美術家、塩田千春（３５）＝個展「沈黙から」の成果　　＜放送＞　　テレビディレクター、金本麻理子（３５）＝ドキュメンタリー「マニラ市街戦〜死者１２万　焦土への１ケ月」の成果　　＜大衆芸能＞　　落語家、林家たい平（４３）＝「林家たい平独演会」などの成果　　＜芸術振興＞　　ＢａｎｋＡＲＴ１９２９代表、池田修（５０）＝ＢａｎｋＡＲＴ１９２９およびＢａｎｋＡＲＴＮＹＫの企画・運営　　＜評論等＞　　思想史家、田中純（４８）＝著作「都市の詩学−場所の記憶と徴候」　毎日新聞　2008年3月1日　東京朝刊